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石井造園株式会社

ついでに、無理なく、達成感のある活動

石井造園株式会社

http://www.ishii-zouen.co.jp/



第一回目のインタビューで訪問させていただいたのは、石井造園株式会社 代表取締役 石井直樹様です。
昭和40年に創業した同社は横浜市栄区に所在し、公共施設の環境整備や造園をはじめ、マンションの外構や個人邸のお庭造り、メンテナンスを手がけています。
”企業活動を通して、幸せを共有する企業を目指す”という経営理念のもとに、地域に根差した活動を継続している同社の取り組み内容と、その効果についてお伺いしました。

●石井造園株式会社のCSR活動
石井造園の地域に根ざした主な活動をご紹介します。
1緑化基金
2インターン・職場体験
3.横浜型地域貢献企業との連携


1.緑化基金
石井造園では2008年から独自に緑化基金を設立しています。同社の全業務の請求金額のうち末尾の3桁を基金として集計し、さらにその同額を同社が寄付し、基金に組み込んでいます。(例えば請求金額が123456円であれば、工事金額456円と、石井造園から456円の合計921円を基金とする。)この緑化基金は同社の社員の発案によるものだそうです。同社のCSR方針の一つである、”緑を扱う者として、地球環境の改善に貢献します”が社内に浸透しているからこそ生まれた事業であり、本業と関連した環境意識の高さが伺えます。平成26年度には109,241円が集まり、植樹・鉢植えの寄贈・緑化活動に利用されているそうです。            


2.インターンシップ・職場体験活動、先生の研修
学生の学ぶ機会の創出に貢献
石井造園では教育支援にも力を入れており、小・中学生の職場体験学習や、大学生のインターンシップを積極的に受け入れています。職業体験を通して、普段の授業では学ぶことのできない社会に触れてもらい、若者のキャリア教育に貢献するためだそうです。これらの取り組みを行うことの効果として、参加した学生は働く意味や素晴らしさを学ぶ事ができ、他方で社員は自身の仕事の内容を伝えることを通して、仕事内容のより深い理解と技術向上にも役立っているとのことでした。また、地域に根ざした企業がインターンシップを受け入れる事によって、学生と地域に根ざした企業の結びつきを強めるきっかけになるのではないかと考えられます。
企業での職場体験の機会を提供することで、若者の社会性の育成にも貢献していました。


3.横浜型地域貢献企業との連携
石井造園では同社単独での活動だけでなく、他の認定企業との連携にも力を入れています。
その活動の一つが、相模原市に本店をおく家電量販店、株式会社ノジマの女子サッカークラブチーム、「ノジマステラ神奈川相模原」のグラウンドの植栽管理です。サッカーの試合後に、選手とサポーターが協力しての掃除活動を企画し、参加者の交流振興に貢献しています。草刈りが終わった後には同社社員とサポーターによる試合が行なわれる事もあるそうです。この”緑地サポーター”としての事業は、「認定企業として素晴らしい活動を続けている石井造園と連携したい」との声を受けて始まったそうですが、地域との縁を大切にする同社の姿勢が現れています。

・石井造園では、上記のようなCSR活動を毎年企画・実行するとともに、これらの活動を地域の方に報告する機会を設けています。

●CSR報告会、報告書の発刊
同社では2009年から、毎年6月の第3土曜日にCSR活動報告会を開催しています。報告会では地域住民、取引先、など同社のステークホルダーに向けて社員ひとりひとりが自らの活動を説明しています。CSR報告会を開催する企業は認定企業の中でも珍しいですが、この報告会を開催する事で”地域から見られている”という意識を強く持つようになるそうです。その結果として、自ずと地域からの期待と責任に応えようとする姿勢が出来上がり、自社での地域に根ざした活動を継続するモチベーションにつながっているようです。

石井造園では、毎年20以上の活動をされているそうです。中小企業がこれら多数の活動を継続していくのは難しいように思えますが、石井造園のCSR活動には、ある合言葉が込められていました。

●ついでに、無理なく、達成感のある活動
石井造園のCSR活動の根底には”ついでに、無理なく、達成感のある活動”という合言葉が込められています。
本業を通した活動を、手の届く範囲で、なおかつ活動の結果、誰が喜ぶのかを考えながら、という意識が全ての活動に込められていると分かります。活動の結果として、人のため、地域のために少しでも役に立った、と達成感を感じることは社員の方の満足度につながり、その活動は継続され、やがては地域を巻き込んだ運動となるようです。

●インタビューを終えての感想
石井造園の取り組みを紹介してきましたが、すべての活動の本質には経営理念”幸せを共有する会社を目指す”が込められているということがお話を通してわかりました。毎年20以上のプロジェクトを実行しているそうですが、特徴的なのは、社員による自発的な参加がみられることです。社員の方が自発的に参加しているのは経営理念が社内に浸透しているからこそと考えられますが、その経営理念は、石井社長との長年にわたるコミュニケーションを通して根付いているように感じました。また、石井造園の活動に対する周囲からの評価の表れとして、ネットの検索欄に「造園」というキーワードで検索すると、トップに石井造園株式会社の名前が出てきます。地域に根ざした企業活動を継続することによって地域社会との中長期的なつながりができた結果、地域から選ばれる企業であり続けられる、という仕組みが見えました

株式会社大川印刷

環境経営を通して持続的に発展する企業

株式会社大川印刷

http://www.ohkawa-inc.co.jp/



今回インタビューにご協力頂いた方は、株式会社大川印刷 代表取締役社長の大川哲郎様です。大川印刷では企画・デザイン、印刷を主な事業としています。特に、医薬品・食品関係の印刷物を多く取り扱っています。横浜に根ざして130年以上の歴史ある同社の取り組みについてお聞きして来ました。

1.横浜ひとまち百景
この事業は、横浜のひと・まち、自然などの地域資源をイラスト化し、絵はがきや展覧会に活用することで、地域をPRする事業です。この活動は一般社団法人マーチング委員会を母体として全国各地に広がっており、横浜では大川印刷が協力しています。
自分たちの住んでいる地域の風景が名刺・ハガキになることで、多くの方に地域を自慢できると、喜ばれているそうです。


2.横浜サンタプロジェクト
「サンタになって横浜に笑顔を届ける」ことを目的に、サンタの姿をした参加者がそれぞれ、福祉施設への訪問しプレゼントを渡す訪問サンタ、パシフィコ横浜周辺を清掃する清掃サンタなどの役割ごとに活動します。このサンタプロジェクトは2009年に始まり、今年で7回目を迎えます。同社は実行委員として発足当時から企画に携わっているそうです。2009年度の開催時には、サンタとしての参加者が120名程でしたが、その後は徐々に活動が広がり、2014年度には650名となりました。この活動に参加している社員の方も、活動を通して、人の繋がりが広がっていくことに喜びを感じているそうです。


3.湘南国際村めぐりの森での植樹・育樹
大川印刷では横須賀市にある湘南国際村めぐりの森での植樹・育樹にも参加されています。
この事業は、環境の保護と障がいのある方の就労支援を目的とするもので、毎年多くの方の参加を募り植樹祭を開催しています。同社では、イベントの告知チラシや、看板の作成を通してこの事業に協力しています。
この活動に社員の方も参加されているそうですが、自然に触れることで気持ちをリフレッシュできているそうです。


●大川社長は環境に配慮した企業活動に重点を置いています。
大川社長は環境に重点を置いた経営姿勢を1990年代から始めています。
具体的には、石油を使わないインキを使用することや、植林に協力することなど多岐にわたります。同社長の環境経営の姿勢は「環境を壊して自分たちが生きられなくなったらお金儲けなんてできない。」という社長のお言葉からも強く感じられました。

●純粋に地域の為に
大川社長は、「自分さえよければ、という経営は続かない。」とおっしゃっていました。長年にわたって経営を続けているのは従業員、地域の方、環境など、会社のすべての関係するもののために、という姿勢が受け継がれているからだと実感しました。長年かけて築きあげてきた信頼があるからこそ、様々な面において地域の方からぜひ協力して下さい、とお願いされるようです。

●大川印刷の経営理念は”私たちは幸せを創造するまごころ企業を目指します”です。
同社のこの経営理念に込められた思いを社員の方に伝えるために、朝礼の中でこの経営理念に関して社員の方と意見交換を行うそうです。社員の方に経営理念を理解してもらうための機会を設けているからこそ、この理念が社内に共有されて、活動の中に現れているようです。また、大川印刷での企業活動のすべてには、地域の方に喜んでもらえるために、と言う気持ちが根底にありました。その純粋で正直な気持ちが社員の方にも伝わっているからこそ、本業を通した社会貢献が継続されていると言えます。

横浜市資源リサイクル事業協同組合

リサイクルデザインタウンを目指して

横浜市資源リサイクル事業協同組合

http://www.recycledesign.or.jp/



今回訪問したのは、横浜市資源リサイクル事業協同組合(通称:リサイクルデザイン)です。1992年に設立された横浜市資源リサイクル事業協同組合は、環境に配慮する行動に市民が参加する街、「リサイクルデザインタウン」の実現を目指し、横浜市内でのリサイクルの推進・啓発を行っています。企画室長の戸川孝則様に、事業内容ついてお聞きしました。

●認定を受けられた経緯
資源回収業者の事業は、1992年に国連地球サミットでのいわゆるリオ宣言の中で具体化された「持続可能な開発」という言葉が取り上げられた事をきっかけに、社会課題への対応として徐々に理解されるようになりました。そこで横浜市資源リサイクル事業協同組合をはじめとして、横浜市内の方にもリサイクルデザインタウンについて理解して頂き、共に実現する事を目的として横浜型地域貢献企業の認定を受けられたそうです。


1.出前講座
現場で働いているリサイクル業者の方が横浜市内の小中学校や町内会と幅広く訪問しています。講座の中では、ごみと資源を分ける理由や、資源物のリサイクルについてのお話をされているそうです。平成26年は25ヶ所を訪問しており、講座を受けられた方の口コミから、さらに他の地域から依頼がくる事も多いそうです。最近では企業の方からもごみの分別に取り組む理由を社員に理解してもらいたい、との要望が増えているそうです。


2.環境絵日記
この活動は小学生が環境絵日記を書く事を通して、家族や身近な人と環境問題について考える機会づくりを目的としています。今年は「みんなでつくる環境未来都市・横浜」と題し、子どもたちが考える”未来の横浜”を発表しています。横浜市内の小学生から23,375作品が集まり、11月1日(日)に横浜大さん橋国際客船ターミナル大さん橋ホールにて開催された環境絵日記展では8,646名の方が参加されたそうです。また、絵日記展では地域企業賞という表彰もあります。これは横浜市内の企業と小学校のつながりをつくり出すもので、企業の中で作品を選び、小学校の朝礼に出向き受賞した小学生に表彰するというものです。社員の方が作品を選ぶ過程で、環境に対する考えを共有する機会になったとの声もあるそうです。現在は20社程の協力いただいているようですが、企業とその地域の方との強い結びつきがここから創出されています。


3.資源集団回収による古紙回収率100%の達成
私たちが家庭で分別して回収に出す資源物は、回収後に再資源化され、製品に生まれ変わります。回収の仕方は資源集団回収(事業者による回収)と行政回収の2つがありますが、横浜市では、古紙の回収をすべて集団回収しています。資源集団回収をすると、行政による回収に比べコストが少なく、また実施団体には横浜市からの奨励金も出されます。(回収量1kgあたり3円)集団資源回収が広まる以前の1980年代当時は、紙類のリサイクルは今ほど進んでおらず、一部の資源回収を除き新聞や雑誌なども多くは燃やすごみとして処分されていました。1990年代には地球規模の環境破壊問題が社会問題として取り上げられるようになったことを契機に、資源集団回収による古紙の回収は徐々に拡大していきました。その後は経済状況の悪化や環境基本法の施行により資源業者の経営環境は大きく変化しましたが、その厳しい状況にあっても資源集団回収は行政の協力とともに推進されてきました。やがて2010年には「ヨコハマ3R夢プラン」の中で、資源集団回収による古紙回収率100%が掲げられ、その後2014年に横浜市職員・地域の自治会・町内会、回収業者の連携により、ついに古紙回収率100%を達成することができました。資源を効率的に回収することを通して循環型社会の構築を目指すこの取り組みからは、同組合の経営戦略としての社会課題解決への姿勢を見ることができます。また、町内会・自治会や横浜市の協力を得られたことは、当組合の理念が共有された表れであるといえます。


●リサイクルデザインタウン(地域循環型社会)をめざして
地球環境への負荷を軽減する役割を担う静脈産業としてのリサイクル業においては、「家庭から出たごみはどこへ行くのか」「なぜ資源を細かく分別するのか」といった事に対する市民の方の理解とその後の協力が、産業の発展とひいては持続可能な社会の実現につながります。同組合では、持続可能な地域循環型社会を、”リサイクルデザインタウン”と称し、その実現ための活動は、その事業の対象者・目的が明確となっており、また一過性のイベントではなく継続性のあるプロジェクトとして成り立っています。理想とする社会の実現のために、プロジェクトを継続させるには、事業者単体でこれを実施するのではなく、行政・NPOなどの他の組織を巻き込む事が重要であると今回のインタビューを通して分かりました。

株式会社ココラボ

地域に「ありがとう」を生み出す会社

株式会社ココラボ

https://cocollabo.jp/



今回は株式会社協進印刷(現ココラボ)の取り組みをご紹介します。協進印刷は1959年に横浜市神奈川区大口に創立され、チラシやパンフレットなどの商業印刷を主に取り扱っています。
「進取の精神と不断の努力により新しい価値を創造し、永続的な社会の発展に貢献する。」という経営理念のもと、従来の印刷という枠にとらわれず、ステークホルダーの期待や責任に応えるために様々な取り組みをしています。今回はその取り組みの一部をご紹介します。


1.ありがとうの日
同社では毎月10日に「ありがとうの日」として日頃からお世話になっているお客様や地域の方への感謝の気持ちを込めて、社員の方が自ら企画・作成した様々なグッズをお渡ししています。秋の行楽の季節には、思い出を残す為のスクラップブックを配布し、また11月には幼稚園児向けに勤労感謝の日にむけて家族に感謝の手紙を書くためにレターセットを作成するなど、毎回工夫されています。
企画にあたっては、「誰に向けてお渡しするのか」、「その企画を実施することで、地域や自社にどんな影響が起こるか」を社員の方が自ら考えることで、企画力・提案力を磨く機会となっています。また、日頃からお世話になっている方に「ありがとう」という言葉をいただけることも、この企画のやりがいにつながっているのではないでしょうか。


2.かけはしジャーナルプロジェクト
こちらは、横浜デジタルアーツ専門学校と横浜市国際局との恊働事業として、国際交流によって2020年に開催される東京オリンピックを盛り上げるために企画されたものです。
横浜市とベナン共和国のコトヌー市が2013年に交流協力の共同声明を発表したことを受けて、民間による交流を広めようと始まったこの企画では、まず横浜デジタルアーツ専門学校の学生がベナンの大使館や在日ベナン人を取材し、フランス語で横浜を紹介する冊子を作成しました。冊子は横浜市議訪問団を通じてコトヌー市長やベナン共和国大統領の元に渡りました。今後はベナンを紹介する冊子を作成し、横浜市内の学校に配布するとのことでしたが、この活動を全国の各都市に広めることができれば、普段はあまり聞きなれない国に対しても、市民同士の相互理解が深まると思われます。


3.環境に配慮した活動
協進印刷では、印刷を通して発生する紙やインキによる環境への影響を少しでも和らげるための取り組みを日々続けています。グリーンプリンティング認定や、クリオネマークなど、環境に関する各種認定の取得だけでなく、印刷の過程で発生する損紙(試し刷りのために廃棄される紙)を封筒として再利用しています。環境活動というと、何から始めればいいのか難しいこともありますが、協進印刷によるこの環境活動は、無理なく続けられるといえます。


4.インターンシップの受け入れ
協進印刷では、毎年インターンシップを受け入れています。中学生の職場体験学習から、高校生、大学生、専門学校生など、さまざまな方を研修生として受け入れ、若者の実践的な学び場を提供しています。中学生の職場体験では、学校の先生以外の大人と接する機会として、また、専門学校生にとっては、普段の学校で学んでいることを実践する場となっています。


●地域資源を結びつけることで、地域のよりよい暮らしを実現する。
印刷業は、どの業種ともかかわりのある業種です。協進印刷でも、学校教材から企業のパンフレット、団体の広報誌まで、様々な方とのつながりがあります。地域における課題を解決するためにさまざまな主体を結びつける役割を果たすことができるのは、印刷会社ならではではないかと考えられます。今後は、横浜型地域貢献企業による協働事業も、協進印刷を基点として広がっていくことが期待されます。